家族の生活を支える夫、もしくは妻に万が一のことがあった場合、残された遺族が受け取ることができる公的年金制度のひとつに「遺族年金」があります。
遺族年金だけで生活費の全額が補えるわけではありませんが、一定の保障が受けられますので、残された遺族にとっては大切な大きな保障となります。
生命保険に加入する際も、この遺族年金を加味して死亡保険金額を算出するのですが、実際には遺族年金がどんな制度なのか「よくわからない」「ややこしい」「難しい」と思われているも多いのではないでしょうか?
こちらでは遺族年金について、できるだけわかりやすくご紹介します。
遺族年金とは
遺族年金は公的年金制度のひとつで、遺族基礎年金・遺族厚生年金の2種類になります。
どの遺族年金を受け取れるかについては、亡くなった人の職業によって異なり、基本的には自営業の方は「遺族基礎年金」、会社員の方は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の両方が保障の対象となり、遺族年金をもらえる遺族の範囲も年金の種類によって異なり受給期間も異なります。
聞いたことはあるけど、ややこしい・・・と感じてしまう遺族年金の仕組みについては、生命保険文化センターホームページ内にも記載がありますので併せてご確認いただけるとわかりやすいかと思います。
平成26年3月まで遺族基礎年金を受給できる人は、「子どもがいる妻」や「子ども」で夫は受給の対象外でしたが、平成26年4月以降「子供のいる妻」から「子どものいる配偶者」に変わったため、父子家庭でも受給できるようになりました。
※実施日前にすでに父子家庭だった方は、遺族基礎年金は受給できません。
地方公務員の遺族年金について
以前の遺族年金は遺族基礎年金・遺族厚生年金・遺族共済年金の3つの種類がありましたが、公務員の共済年金は平成27年10月に厚生年金に統合されています。
地方公務員については、平成27年9月30日までの地方公務員共済組合員期間があれば、経過措置として、加入期間に応じた「職域部分」の年金が共済組合より支給されます。
地方公務員と言っても、学校の先生や警察官、市区町村の職員等職種ごとに共済組合が存在しますので、該当する共済組合のホームページを見て確認しましょう。
こちらは道府県庁の職員を対象とした地方公務員の共済組合についてご紹介します。
「遺族共済年金」については地方職員共済組合ホームページ内に記載がありますので、併せてご確認いただけるとわかりやすいかと思います。
遺族基礎年金
自営業の方が亡くなった場合は「遺族基礎年金」のみの受給となりますが、一定の要件を満たす場合は死亡一時金寡婦年金が受け取れる可能性があります。
受給条件
遺族基礎年金の受給条件は、以下の4つのうちいずれかに該当する必要があります。
・国民年金に加入していること
・国民年金に加入していた人で日本国内に住所があり年齢が60歳以上65歳未満
・老齢基礎年金を受給中
・老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている
保険料が納付されている要件
基本的に国民年金に加入していることが受給条件になりますが、保険料が納付されているとは以下の2つの条件いずれかを満たしていることが必要となります。
・亡くなった日の2ヶ月前までの被保険者期間の中で保険料納付期間と保険料免除期間の合計が3分の2以上であること
・亡くなった日の2ヶ月前までの1年間に保険料支払いを滞納していないこと
受給制限
遺族基礎年金を受給できる遺族の条件は、亡くなった人によって生計が維持されていた子供のいる配偶者または子供になります。
また生計が同一であるという要件を満たす必要もあり、生計が維持されていたと証明するためには、原則として遺族の年収が850万円未満であることが要件となります。
子供とは、以下の条件のいずれかを満たすことにより、遺族年金の保障の対象となります。
・18歳到達年度の3月31日を経過していない子供
・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子供
⇒日本年金機構ホームページ「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」はこちら
遺族厚生年金
会社員・公務員の方が亡くなり、妻と子がいる場合、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が併せて受給できますが、遺族厚生年金には夫に年齢制限があります。
遺族が妻だけの場合、妻が亡くなった時に夫が55歳未満ですと、遺族厚生年金を受け取ることができません。
対象年齢の子どもがいれば、その子どもが高校を卒業する年になるまで遺族厚生年金を受け取ることができます。
また、遺族厚生年金の受給期間は、受給資格が発生した時(配偶者が死亡した時)から、再婚しない限りは原則としてずっと受給ができます。
65歳を超えて老齢年金を受け取れるようになった後は、どちらか多い方の金額を受け取ることができるようになります。
受給条件
遺族厚生年金の受給条件は、以下の5つのうちいずれかに該当をする必要があります。
・厚生年金に加入している
・厚生年金の加入中に初診日のある傷病が原因で初診日から5年以内に死亡した
・1級または2級の障害厚生年金を受給
・老齢厚生年金を受給している
・老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている
保険料が納付されている要件
会社員の方であれば、厚生年金は給与天引きになっていることが多いため問題ないと思いますが、遺族基礎年金と同じく保険料納付されていることが要件となり、以下の2つの条件いずれかを満たしていることが必要となります。
・亡くなった人の保険料納付期間が国民年金加入期間の3分の2以上
・死亡日の2ヶ月前までの1年間に保険料の滞納がないこと(亡くなった方が死亡日に65歳未満であること)
受給優先順位
遺族厚生年金を受給できる遺族の条件は、配偶者や子供だけではなく、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族となります。
以下が優先順位となります。
・配偶者または子供
・父母
・孫
・祖父母
配偶者または子供とは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給することができます。
遺族基礎年金では、子供がいない配偶者が受給できませんでしたが、遺族厚生年金は子供がいない配偶者も受給が可能でが、その配偶者が30歳未満の妻であれば、5年間受給できます。
子供がいない配偶者が40歳以上であれば、65歳になるまで遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が加算されて支給されるケースもあります。
父母と祖父母は55歳以上の人が60歳になったときから支給が始まるという年齢の要件が設けられています。
寡婦年金と死亡一時金
寡婦年金とは
保険料納付期間が25年以上ある自営業の夫が死亡したとき、第1号被保険者期間だけで計算した年金額の4分の3が支給されるもので、受け取れるのは婚姻関係が10年以上あり65歳未満の妻で60歳から65歳までの5年間受け取れます。
※亡くなった夫が老齢基礎年金や障害年金を受給していたり、妻が老齢基礎年金の繰り上げを受給している場合は受け取ることができません。
死亡一時金とは
第1号被保険者として保険料を3年納めた方が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らないまま亡くなった場合は死亡一時金が受け取れます。
寡婦年金のどちらも受けられる場合は、一方を選んで受け取ることとなり、死亡一時金の金額は納付期間と保険料免除期間に応じて12万円~32万円なります。